くも膜下出血で後遺症が残った場合、リハビリって何するの?

一口にリハビリと言っても病気やその人の状態によって行うリハビリ方法は様々です。

特にくも膜下出血のように脳に障害を負った場合は、目に見えない神経に異常を来す為、後遺症も多種多様に現れます。

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その為、決まったリハビリ方法があるわけではないんです。

そこで今回は、くも膜下出血で後遺症が残った場合のリハビリについて解説します!

くも膜下出血って何?

まず最初に、くも膜下出血とその後遺症について簡単に説明しますね。

くも膜下出血は、脳を包んでいる3つの膜(外から硬膜・くも膜・軟膜)の内、くも膜と軟膜の間を通過する血管が破れる脳の病気です。

出血の原因で最も多いのが、脳動脈瘤と呼ばれる瘤が破裂することです。この破裂を引き起こすのが、喫煙、高血圧、過度の飲酒になります。

くも膜と軟膜の間には液体が流れており、脳はその液体の中でプカプカと浮いている状態にあります。

赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる時に、羊水に浮いているのと同じような感じです。

しかし、くも膜下出血でくも膜と軟膜の間にある血管が破れると、脳全体を満たしている液体の中に血液が漏れ出します。

これにより異常を来した液体が脳に悪影響を及ぼして、様々な後遺症をもたらします。

また、出血量が多いと重度の後遺症が残り、最悪の場合は死に至ることもあります。

くも膜下出血と後遺症

くも膜下出血は、死亡率が10〜67%とされ、一命を取り止めても約30%の人に重度の後遺症が残ります

発症の初めの頃は、出血により脳がむくんだり、血管が一時的に細くなる事があります。

これにより、頭痛や吐き気、更には脳梗塞を起こす可能性もあるなど、非常に不安定な状態です。

また、この不安定な時期を過ぎても身体には後遺症が残っている場合があります。

くも膜下出血を発症した人のうち、約3割の人に何かしらの後遺症が残ると言われています。

くも膜下出血の後遺症は、障害を受ける部位によっても異なりますが、主に

  • 片麻痺
  • 感覚障害
  • 言語障害
  • 嚥下障害
  • 意識障害

などを生じます。

片麻痺

片麻痺は、身体の半身が麻痺して脱力したり硬くなって動きにくくなる状態です。

また、左脳は右半身、右脳は左半身と神経が繋がっている為、仮に左脳に出血が生じた場合、右半身に後遺症として麻痺が現れます。

感覚障害

感覚障害は、触る、熱い、痛いなどの意識的な感覚や身体の位置を感じ取る無意識の感覚がわかりにくくなります。

長時間の正座の後や腕を圧迫して寝た時の痺れや脱力感が麻痺や感覚障害に近い状態です。

発声・飲み込みの障害

顔面や喉に麻痺が生じると、呂律が回らなくなる言語障害や飲み込みが悪くなる嚥下障害が後遺症として現れます。

また、目立った麻痺がないのに言葉が出ない、言ってることが理解できなくなる失語症もあります。

失語症は、言葉のわからない国に放り出されたような状況に例えられます。

それ程の不安な状況に立たされてしまうんです。

意識障害

意識障害は、くも膜下出血の予後を予測する重要な後遺症です。

意識障害が強いと予後は悪く、以降、目を覚ますことなく寝たきりになってしまう可能性が高いんです。

その他

くも膜下出血の後遺症には他にも、怒りっぽくなる、集中できないなどの症状を伴う高次脳機能障害や認知症、瞼が下がってしまったり、物が二重に見える複視が現れる事もあります。

脳は、私達の言動全てをコントロールする司令塔ですから、ここにエラーが起きると先述したような様々な後遺症を伴うんです!

3種のリハビリのプロフェッショナル

くも膜下出血を発症した場合、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)の3種の専門科がリハビリを行います。

理学療法士は、基本動作(起きる、立つ、座る)や歩行訓練などを実施し、主に下半身を中心にリハビリを行います。

作業療法士は、日常生活動作(食事、排泄、更衣、整容、入浴)や腕・指など上半身を中心にリハビリを行います。

言語聴覚士は、言葉の専門科で、発声や飲み込みの練習、高次脳機能障害に対してのリハビリを行います。

ただ、ここで挙げたように明確にリハビリ内容が分かれているわけではありませんが、くも膜下出血の発症後は、これらの専門科達がリハビリを実施していきます。

時期別のくも膜下出血のリハビリ

では、くも膜下出血の後遺症について触れたところで、今度はリハビリ内容について解説していきます!

ただ先述したように、くも膜下出血を始め脳疾患は障害部位や程度、受傷時期によって現れる後遺症も異ります。

その為、一概にこの方法がベストというリハビリはありません

ですので、ここでは大まかなリハビリ内容について解説します。

急性期(発症後1週間)

急性期のリハビリの目的は

  • 廃用症候群の予防

  • 早期のリハビリ開始

です。

廃用症候群の予防

廃用症候群とは、身体を動かさないで寝た状態のままでいると、身体の様々な機能が衰える事を指します。

概ね3週間以上寝たきりの状態を続けると

  • 床ずれ(寝たきりの状態で、身体の同じ場所に体重がかかり続けると、血流が滞って、傷ができる)
  • 関節拘縮(関節が硬くなって動かなくなる)
  • 肺炎
  • 疼痛
  • むくみ

などが起き、これらを総称して廃用症候群と呼びます。

くも膜下出血の発症直後は、状態が不安定で身動きがうまくとれず、寝たきりの状態であることも多いです。

その為、リハビリで廃用症候群を予防することは、急性期以降の後遺症の改善に大きな影響を与えます

早期のリハビリ開始

くも膜下出血に限らず、リハビリは早期の開始が他の病気のリスクを減らしたり、後遺症の改善に効果的であるとの報告があります。

ですが!

くも膜下出血の発症後は、24時間以内の再発と1ヶ月以内は脳血管が細くなりやすく血管が詰まりやすい時期でもあります。

その為、早期のリハビリを開始する為にも、再発防止のリスク管理を行う事が重要になります。

具体的には、意識の変動の有無の確認、血圧管理、脳内の圧力のコントロールです。

急性期のリハビリ

発症後すぐのリハビリでは

  • ポジショニング
  • 関節可動域訓練
  • 座位保持訓練
  • 起立訓練

などを状態に合わせて行います。

ポジショニングとは、寝たきり状態にある時に、楽な姿勢を取れるようにベッドの高さやクッション、枕の位置を調整する事です。

これにより、廃用症候群を防止します。

関節可動域訓練は、リハビリの基本でもあり、関節が硬くならないように身体各所の関節を動かすことです。

関節が硬くなって動かなくなると、廃用症候群を起こしやすくなったり、起立や歩行に支障を来してしまいます。

急性期の麻痺は弛緩している事がほとんどですが、今後への後遺症の悪化を防ぐ為にも無理のない範囲で実施していきます。

座位保持訓練は、文字通り座る練習です。

座る事は、寝る・立つ・歩く・食べるなどの様々な動作を行う為に必ず必要な姿勢になります。

その為、他の後遺症や血圧が落ち着いていれば、積極的に行います。

寝たきり状態が続くと足腰の筋肉は容易に衰えてしまいます。

それを防ぐ為に、状態が落ち着いていれば、立ち上がる練習(足に体重を乗せる練習)も行います。

ただ、くも膜下出血を発症した直後や後遺症が重度の場合は、身体がクラゲのようにヘナヘナに柔らかくなっている為、座るだけでも重労働です。

その為、装具を装着したり、リハビリの先生が2人がかりで汗だくで起立練習を行う事もあります!

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回復期(約9〜12週間)

回復期は、その名の通り身体機能が最も回復する時期です。

一般的には、発症から約3ヶ月間が機能が最も回復すると言われています。

この時期のリハビリのポイントは

正しい姿勢や動き方を再学習することです。

具体的には、硬くなっている筋肉や痛みなどを改善しながら、効率的で疲れにくい動き方を練習していきます。

また、回復期は麻痺の回復が著しい時期でもある為、積極的に麻痺側を使用していきます。

以前は、麻痺側への介入は行なわず、麻痺していない側のみにアプローチを行う残存機能に重視したリハビリでした。

しかし現在では、麻痺している腕や足は、積極的にリハビリを行う事で硬くなるのを防ぐとともに、機能を改善できる事が分かってきました。

その為、麻痺側も積極的にリハビリを行います。

回復期のリハビリ

回復期のリハビリは

  • 関節可動域訓練
  • 基本動作訓練
  • 歩行訓練
  • 退院に向けた日常生活訓練
  • 装具の作成
  • 言語訓練

を行います。

回復期は、麻痺が回復してくる過程で、弛緩した筋肉が硬くなってきます。

この過程で怖いのが、関節拘縮です。

関節拘縮とは、関節が固まって動かなくなってしまう状態です。

関節が固まってしまうのを防ぐためにも関節可動域訓練は重要です。

この時期は、自宅に帰る為に必要な動作を徹底して練習していきます。

具体的には、基本動作訓練(起きる、座る、立つなど)と日常生活動作(食事、排泄、更衣、整容、入浴)、歩行訓練です。

しかし、それらの動作を阻害してしまうのが、麻痺している膝の脱力や足首の麻痺による後遺症です。

特に足首に関しては、足が内側を向いて硬くなってしまう為、床に足を着ける事が難しくなり、捻挫や転倒の危険性が格段に高くなってしまいます。

それらを防ぐ為に、麻痺の状態に合わせて装具を作成し、膝の安定性向上や足が安定して床に着けるようにします。

この他にも、状態に応じて電気刺激療法やエアロバイクなども実施します。

言語訓練は、姿勢を整えつつ、口の運動を通して発声・発音の練習をします。

失語のリハビリに関しては、こちらの記事を参照して下さい。

脳内出血の後遺症である失語症とリハビリについて解説します!

維持期(12週以降)

維持期は、在宅に戻ってからのリハビリとなります。

急性期、回復期が病院でのリハビリだったのに対し、維持期では、訪問リハビリやデイケアサービス、老人保健施設でのリハビリを行います。

この時期には、機能の回復は緩やかとなり、後遺症もある程度固まってきます。

その為、リハビリは麻痺などの後遺症の改善より生活面に重点を置いた内容が中心となります。

また、病院で出来た動作が自宅に戻ると出来なくなってしまう事は良くあることです。

住み慣れたはずの自宅ですが、後遺症が残った状態で自宅に戻ると、そこはまったく別世界の空間となってしまうんです。

これに対して

  • 動作指導
  • 動きやすい環境の整備
  • 手すりや歩行器などの福祉用具の選定
  • 家族への介助指導
  • 自主訓練指導

などを行います。

また、麻痺の後遺症により関節拘縮のリスクは常に付きまとう為、関節可動域訓練や状態や状況に応じての基本動作訓練や歩行訓練は継続して実施します。

この時期に重要な事は、転倒や再発を防止して機能を維持する事です。

寝たきりの場合

くも膜下出血は、出血が多量であった場合や再出血を起こした場合に、重度の意識障害が後遺症として残り、寝たきりになる事もあります。

寝たきりのリハビリでは、床ずれの防止やできる限り身体が硬くなりにくい姿位を取れるように、ポジショニング関節可動域訓練を中心に実施します。

また、必要に応じて家族へのポジショニング指導、介助指導も行います。

まとめ

くも膜下出血の後遺症は、半身麻痺や感覚障害などがありますが、後遺症の現れ方は出血部位や程度によって様々です。

その為、決まったリハビリ内容があるわけではなく、状態に応じてPT、OT、STなどの専門科がリハビリ内容を立案していきます。

ただ、一度障害を受けた神経は元には戻らない為、リハビリをしても後遺症を完全になくす事はできません。

くも膜下出血のように、生活習慣が発症リスクを左右する病気の場合、やっぱりリハビリを必要とする前に防ぐ事が大切なんだと改めて考えさせられますね。

こちらの記事もご覧ください。

くも膜下出血の後遺症で現れる2種類の認知症を解説します!

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