脳内出血の後遺症である失語症とリハビリについて解説します!

言葉は、私達人間に備わっている重要なコミュニケーションツールの一つです。

しかし、脳内出血を起こすと、後遺症に失語症という言語障害を伴う場合があります。

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失語症は、言葉の通じない異国に突然迷い込んだような不安を生じます。

今回は、脳内出血の後遺症である失語症とリハビリについて解説していきます!

脳内出血と失語症の関係

脳内出血とは、脳にある血管が破けて血液が脳内に浸み出す脳の病気です。

出血が脳内に浸出していき、障害を与える脳の部位によって様々な後遺症を伴います。

脳内出血の他、様々な脳疾患による後遺症には、代表的なもので片麻痺や感覚障害、言語障害などがあります。

言語障害には、「構音障害」と「失語症」があります。

構音障害は、発音が正しくできない症状を指します。

脳内出血に伴い唇や舌、声帯などをコントロールする運動中枢に障害を受けることで、麻痺が生じて話しにくくなります。

一方、失語症は脳の言語中枢の障害で、言葉の理解や表現が困難になる状態のことをいいます。

言語中枢は、左脳にある場合が多く、仮に左脳に脳内出血が起きた場合は、右の麻痺や感覚障害とともに、失語が後遺症として残る可能性があります。

失語症と構音障害は、言語を発するという過程の中で

  • 「指令を出す本部(脳)」
  • 「指令を受けて働く現場(舌、声帯、唇など)」

のどちらに障害が出るかが、大きな違いになります。

失語症とは

私達が何の支障もなく言葉を発することができるのは、ウェルニッケ野とブローカ野という2つの言語中枢の働きが重要になります。

『言語-Sideswipe』より引用

ウェルニッケ野は、左の耳の奥(左脳)あたりにあります。

その役割は、他者や自分が発した言葉の意味や内容を理解する事です。

また、話す言葉の文章の構成も行なわれます。

言葉や文章を頭の中で解釈し、文章を構成した後、ブローカ野にその情報を伝達します。

ブローカ野は、左脳の前方にあります。

その役割は、ウェルニッケ野から受けた情報を元に、話すために必要な運動を発語器官の筋肉に伝え、言葉として発する事です。

言葉を発するには、ウェルニッケ野とブローカ野の情報伝達が重要になります。

しかし、脳内出血などの脳疾患によって、言葉の理解~発声までのプロセスのどこかに障害が出ると、後遺症として失語症を伴います。

失語症による後遺症は、話すことだけでなく

  • 聴く
  • 話す
  • 書く
  • 読む

が困難になり、意思の疎通に支障を来します。

具体的には

  • 言ってる事は分かるけど、言葉が出ない
  • 言いたい言葉と違う言葉が出てくる
  • 相手の言っている事がわからないから、うまく返答できない

などの症状が現れます。

ある日突然、言語の分からない異国の地に連れてこられたら不安になりませんか?

脳内出血を起こして失語症が後遺症に残った方は、それと同じような状況に立たされます。

考えただけで、怖くなってしまいますね。

代表的な失語症は2つ

失語症のタイプは、脳内出血により、脳のどこに障害を受けたかによって、大きく2つに分けられます。

ウェルニッケ失語

言葉の理解が困難となる失語症です。

この失語症が後遺症として残ると、比較的流暢に話す事はできるものの、相手が話している言葉の意味を理解することができません。

その為、会話が成立しない事が多く、話す事も支離滅裂で、コミュニケーションに支障を来します。

ブローカ失語

このタイプの失語症は、相手が話している言葉の意味は理解できるものの、イメージが言葉になる過程に支障を来します。

その為、ブローカ失語が後遺症として現れると話す事がうまくできず、ぎこちない話し方になります。

その他のタイプ

上記の2つ以外にも

  • 全失語:ブローカ失語とウェルニッケ失語が併発し、全ての言語機能に障害を来す
  • 健忘失語:人の名前や物品の名前が言えない
  • 伝導失語:理解力は良いが、自分で言ったことを復唱できない

などの失語症もあります。

失語症のリハビリ

ここからは、失語症のリハビリについて触れていきたいと思います。

失語症のリハビリの流れ

まず、リハビリの流れについて触れていきます。

ただ、これはあくまでも一般的な流れになりますので、時期や実際の流れに関しては個人差も出てきます。

脳内出血のリハビリ(身体・言語)は

  • 急性期(発症後3週間)
  • 回復期(発症後3ヶ月)
  • 維持期(3ヶ月以降)

の3つの時期に分けて行なわれます。

急性期は、発症後間もないため、全身状態のリスク管理に注意しながらリハビリを進めていきます。

この時期のリハビリは、患者さんに過度な負担をかけないよう、挨拶など日常生活の中でのコミュニケーションを重視していきます。

回復期のリハビリは、急性期病院からリハビリテーション病院に転院し、退院に向けて機能を向上させていきます。

この時期は全身状態が安定している為、積極的なリハビリを行なっていく時期です。

その為、患者さんに現れている後遺症に応じて、「聞く・話す・読む・書く」の4つのパターンを組み合わせて行います。

  • 聞く:短い文章やテレビのニュースなどを聞いてもらい、その内容について答える
  • 話す:絵を見せて名前を言う、言葉を復唱する、まんがの内容を説明する
  • 読む:簡単な文や文章を読んでもらい、その内容について質問する
  • 書く:日記を書く、カレンダーに予定を書き込む、一日のリハビリの予定をメモする

などを行います。

維持期のリハビリは、残存している後遺症の悪化を防ぎ、現状機能の維持を図るとともに、他者との交流や日常でのコミュニケーション能力・手段を獲得していきます。

この時期は、通院リハビリや訪問リハビリ、デイケアサービスなどを活用しながらリハビリを行います。

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失語症リハビリのプロ、言語聴覚士

失語症などの言語障害のリハビリは、言語聴覚士(以下、ST)という国家資格の専門科が行います。

STが行う失語症のリハビリの目的には、2つの側面があります。

  • 言語症状に適したリハビリを行い、失語症を最大限に改善させること。

  • 失語症を持ちながらも、患者さんが生きがいのある生活を送れるよう支援すること。

そしてSTは、その人その人の状態に合わせたリハビリを提供する為、検査をおこなって、その人の後遺症の程度を評価します。

その評価に用いられている代表的な失語症検査のが「SLTA(標準失語症検査)」です。

この検査では、患者さんの聞く力・話す力・読む力・書く力・計算する力を評価します。

失語症は、タイプによって障害部位や症状が異なりますし、人によっても症状の現れ方に違いがありますからね。

例えば、重度の失語の場合は、無理に会話は行わず、患者さんの興味のある物や過去に撮った写真などを使って、コミュニケーション手段を模索していきます。

また、絵の描かれたカードを使用する事もあります。

これは、言葉と意味を結ぶ訓練として用いられ、耳で聞いた単語やかなで書かれた単語とカードを照らし合わせるリハビリです。

他にも1文字の単語から発話を練習し、すこしずつ文字数を増やしたりと、段階に応じてリハビリを実施していきます。

ですが、ここで紹介したリハビリはほんの一部でしかありません。

というのも、脳内出血の後遺症である失語症は、出血の程度やその人の性格、環境など様々な要因によって、現れ方は千差万別です。

その為、STはその様々な要因を考慮し、その人に合ったオーダーメイドのリハビリを考案していきます。

ですから、このリハビリがベストというものはありません。

また、STは

どのように接すれば失語症の人とうまくコミュニケーションがとれるのか

を検討して周囲の人々に指導する役割も担っています。

脳内出血により損傷を受けた神経細胞は元には戻らない為、失語症が後遺症として残った場合、麻痺などと同様に一生涯、後遺症が残ります。

ですが、たとえ失語症が後遺症として残ったとしても、その人に合ったコミュニケーション方法をSTは教えてくれます。

日常生活の全てが失語症のリハビリ

最後に、どうしても伝えたいこと。

それは

正確に流暢に話すことだけがコミュニケーションのすべてではありません!

失語症の人の中には、うまくコミュニケーションが取れない事で、塞ぎ込み、殻に閉じこもって話すことを諦めている人もいます。

また、ご家族の中には、話す事を重視して本人を責めてしまう光景も見受けられます。

ですが、どんな方法であれ、自分の考えを他者に伝えようとする事が大切です。

そして、周りの人もそれを理解し、失語症のある人の思いを汲み取ろうとする姿勢が重要です。

思いが通じ合うことで、それが失語症の人のコミュニケーションを図る意欲や能力を高めます。

食事場面やテレビを観ながら、共通の話をしながらなど、日常生活の何気ないやりとり全てが失語症のリハビリになるんです!

まとめ

失語症は、脳内出血などの脳疾患によって、主に左脳にある言語中枢に障害を受けると後遺症として現れます。

失語症のタイプには、言葉の理解に支障を来すウェルニッケ失語と発声に支障を来すブローカ失語の2つに大きく分けられます。

失語症のリハビリは、言語聴覚士という専門科が担当し

  • 言語症状に適したリハビリを行い、失語症を最大限に改善させること。
  • 失語症を持ちながらも、患者さんが生きがいのある生活を送れるよう支援すること。

という2つの側面を元にリハビリを実施します。

脳内出血の後遺症である失語症は、出血の程度やその人の性格、環境など様々な要因によって、現れ方は千差万別です。

その為言語聴覚士は、その人の状態に合ったリハビリ内容を検討して提供してくれます。

また、コミュニケーションというのは、言葉だけではありません。

言語聴覚士は、状態に応じて言葉以外のコミュニケーション方法を一緒に考えてくれます。

そして、最も大切な事は、日常生活の全てがリハビリ場面になるという事です!

決して塞ぎ込まず、周囲の助けを借りながら前に進んでいきましょう!

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