うつ病は脳疾患の後遺症!?その発生機序と注意点を解説!

うつ病は、精神的なストレスなどが原因で起こる心の病気です。

ですが、脳梗塞などの脳疾患とうつ病にも関連性がある事をご存知のですか?

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脳梗塞を発症して生じる後遺症や環境の変化、損傷部位によって、精神面への影響が出てくると言われています。

今回は、脳疾患(とりわけ脳梗塞)の後遺症とうつ病の関係性について解説していきます!

うつ病とは

うつ病とは、気分が落ち込んだり、憂うつ気分になるような原因が解決してもそれらの症状が解消せずに長く続き、日常生活に支障をきたす心の病気です。

また、原因となるような事がはっきりと見当たらなくてもうつ病になるケースもあります。

うつ病が発症する根拠は、はっきりと分かっていない部分が多いのですが、セロトニンノルアドレナリンという気分や意欲を担当している神経伝達物質の量が減ってしまう事や様々なストレスが原因と言われています。

上記に加え、うつ病になりやすい性格もあります。

  • 生真面目
  • 几帳面
  • 仕事熱心
  • 責任感が強
  • 気が弱い
  • 人情深く、常に人を気遣う
  • 他者の気持ちに敏感。

などです。

脳疾患とうつ病【原因】

ここでは、脳疾患の中でも比較的発症率が高く、後遺症の表れやすい脳梗塞を中心に解説していきます。

脳梗塞は、脳血管が詰まったり狭くなって脳の神経細胞が壊れてしまう脳の病気です。脳梗塞の後遺症には、身体麻痺や感覚障害、言語障害、高次脳機能障害があります。

では、これらがうつ病とどのように関連しているのでしょうか?順に解説していきます!

神経伝達物質

先述したセロトニンとノルアドレナリンという神経伝達物質は、気分の安定意欲の向上の為に働きます。

これらは、脳幹(きのこの山で表すと大脳がチョコで、脳幹がクッキーの部分)から大脳に向けて投射しています。この経路のどこかに支障を来すと、セロトニンとノルアドレナリンの分泌が不足し、うつ病を発症してしまいます。

脳の損傷

脳の器質的な要因としては、前頭葉大脳辺縁系の損傷による後遺症に、うつ病との関連があります。

前頭葉は、大脳の前方にあり、創造、実行などの高次な機能を担い、意思決定をコントロールするなど、脳の司令塔としての働きがあります。理性脳とも呼ばれ、ヒトで特に発達した部位になります。

大脳辺縁系は、大脳の奥にあり、情動の表出や意欲、記憶、自律神経活動に関与しています。情動脳とも呼ばれ、感情に伴う行動の動機付けを行います。

脳梗塞により、これらの損傷もしくは、これらを結ぶ神経に損傷が生じる事で、うつ病が後遺症として表れる事があります。

また、脳梗塞はたくさんの小さい梗塞が発症する事もあります。

この小梗塞は、損傷部位が小さい為、軽微に前頭葉や大脳辺縁系の機能を低下させる事があり、後遺症はほとんどないか、あっても軽めです。

ですが、小さくとも脳の機能を低下させている為、物事への反応が過敏になりやすくなります。例えば悲観的になりやすくなったり、怒りっぽくなります。

プチうつ病とでも言えるでしょうか。

しかし、症状が表立って出現するわけではない為、周りからは病気だという認識を持ってもらいにくく、叱責を受けるなどの精神的ストレスの積み重ねでうつ病を発症してしまうこともあります。

つまり、器質的な脳の障害を基盤として、この上に精神的ストレスが重なり、うつ病へと発展してしまいます!

脳疾患とうつ病【傾向】

脳疾患(脳卒中)を患った方のうち、15〜72%の方がうつ病になると言われています。

また、発症後、3〜6ヶ月の回復期に当たる時期にうつ病になる頻度が最も高くなります。この理由としては、先述した前頭葉や大脳辺縁系など脳の損傷による原因(脳障害説)が大きくあります。

回復期を過ぎて、慢性期になると再びうつ病の患者数が増加します。この時期は、脳梗塞の後遺症に悩んでしまうなど、心因的な要因(心因説)が大きいようです。

特に、左の前頭葉の損傷による後遺症が大きく影響しています。

この左前頭葉の後遺症として代表的なものが、右片麻痺(右半身は左の脳が担当している)や思う様に話せなくなったり聞き取りが難しくなる失語症です。これらを呈するとうつ病を伴いやすくなります。

右腕が利き腕の人が大多数だと思いますし、人間の特有の機能である会話での意思疎通がうまく行えないというもどかしさは、精神的にかなりのストレスになるだろうと想像できます。

私が以前担当していた失語症の利用者さんは、話す事を諦めてしまい発話の機会が減り、いつもため息ばかりついていました。家庭の中での会話も減少してしまったそうです。

それだけ、私たちにとって言葉というのは大切なものだという事です。突然、言葉のわからない外国に迷い込んだとしたら、誰でも不安やストレスを感じますよね。

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脳疾患とうつ病【特徴】

脳疾患(脳梗塞)のうつ病の症状としては、気分の落ち込み意欲の低下、怒りっぽくなったり、集中力が低下したりします。また、頭痛、めまい、しびれなどの自覚症状や不眠症状がみられます。

特に、脳梗塞を発症して3~6ヶ月(一般的に脳梗塞の回復が最も望める時期と言われています)にうつ病が後遺症として表れる事が多いですから、この時期にリハビリへの意欲が低下すると、身体機能の回復にも影響が出てしまいます。

脳梗塞のうつ病の特徴は、罪悪感や自殺を考える事や精神面の浮き沈みが少ないです。また、脳の器質的な変化や後遺症へのストレスなど原因がはっきりしている場合が多いです。

うつ病は、認知機能には問題がないので、認知症とは区別されます。これは、うつ病の人とかかわる上では注意しなければいけません。

もし、うつ病かもしれないと思ったら、自己記入式のスクリーニングテストを行ってみるのも一つの方法です。

質問票の各項目の合計点が40点以上で、うつ状態の疑い、50点以上でうつ病が疑われます。

これは、あくまでも指標なので、気になる症状などがあれば、専門医の診察をお勧めします。

脳疾患とうつ病【注意点】

薬の副作用

うつ病の治療には、主に薬物療法が行われます。

一般的なうつ病に比べ、脳疾患のうつ病は薬による副作用が出やすい特徴があります。特に注意が必要な副作用は、「せん妄」と「パーキンソン症候群」です。

せん妄は、意識が混濁したり、集中できない、自分のいる場所が分からない、そわそわと動き回るなどの症状がみられます。

パーキンソン症候群は、からだが硬くなったり、小刻み歩行などの症状が表れて動作が不安定になります。

これらの症状が表れた時は、転倒やケガのリスクを伴う為、注意が必要です!

関わり方

うつ病の発症に、精神的なストレスが大いに関係しているのは、これまでも解説してきました。中でも身近にいる家族の患者さんに対する関わり方が重要になります。

ある研究では、家族が患者さんに対して批判的な発言を一日に二個以上発してしまうと、うつ病の再発率が約6~7割近くも高まるとの結果が出ています。

つまり、批判的な発言とうつ病との関連性は深いということです。

そして、もう一つ興味深い研究結果があります!

それは、うつ病の患者さんとその妻の性格との関連性です。

これは、妻の性格をタイプ別に分け、それが夫のうつ病に対してどのように影響を与えているのかを検証したものです。

  • 妻が女性的で、患者である夫を頼りにし、うつ症状に対して一緒に悩み考えられる(タイプ1)
  • 母性に富み、夫を保護しようとし、夫の症状を冷静に受け止める(タイプ2)
  • 男性的で、家庭を支配し、夫に積極的に干渉したがり、叱咤激励する(タイプ3)
  • 夫との距離を遠く置いて、あえて情緒的に交流しようとせず拒絶的(タイプ4)

と4つに分類したそうです。

結果、最も経過が良かったのは、タイプ1で、2→4へなるにつれて経過が悪くなります。また、ここが興味深いのですが、うつ病の経過中にタイプ1→2→3→4へと変わっていくほうが、うつが悪化しやすいというものでした。

この結果から、妻の心境の変化がうつ病の経過に大きく関与していることが分かります。

脳卒中後のうつ – 日本脳卒中協会より引用

うつ病は、治る病気です。特に、脳梗塞に伴ううつ病は、原因がはっきりしている事もある為、リハビリで後遺症へのアプローチを実施していくことで、身体機能と精神面が並行して回復していくこともあります。

しかし、大切なのはうつ病の発症にも大きく関連している接し方です。

何気なく発している言葉や患者さんの為に言っていることが、返って患者さんを追い詰めてしまっていることも往々にしてあると思います。

逆に、関わる頻度が少なくなってしまうことも一人でネガティブなことを考えてしまう時間が多くなってしまい、憂うつな気分を助長してしまいます。

大切なのは、家族や周りの人たちが患者さんと悩みを共有し、一緒に前に進んでいく為の手を差し伸べてあげることだと思います。

そして、時には休みながらゆっくりと問題を解決していく事も必要ではないでしょうか。

まとめ

うつ病は、脳疾患の後遺症としても表れます。

原因としては、脳の器質的な要因を基盤として、後遺症や周囲の環境や関わり方による内因性の問題により、うつ病へと発展することがあります。

脳疾患のうつ病の特徴としては、精神的な浮き沈みが少ないですが、気分の落ち込みや意欲の低下によりリハビリの効果が左右されるといった、身体面への影響も懸念されます。

うつ病の回復には、家族を始め周囲の人も治療に参加するという気持ちが大切です!

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