脳内出血の後遺症でまず思い浮かぶのが、片麻痺や感覚障害、言語障害ではないでしょうか?
しかし、中には「うつ」になる事も。
うつは目には見えない心の病気である為、気付かない事も多いですが、他の後遺症に悪影響を及ぼす為、早期の発見が重要です。
そこで今回は、脳内出血の後遺症で起こる「うつ」について解説します!
目次
うつとは?
うつとは、気分が憂うつになる事です。
誰だって日々の生活の中で憂うつになることはありますよね?
でも数日もすれば回復して気持ちが切り替わり、また普段通りの生活が送れます。
ですが、この憂うつな気分が長く続き、日常生活に支障を来すようなるのが、うつ病です。
うつは、一時的なもの。
うつ病は、長期的なもの。
うつ病になると、自然と回復と言うわけにはいきませんから、医療機関に通院しての治療が必要になります。
うつ病の症状
うつ病の症状は、心と体に現れます。
心に現れる症状
- 抑うつ
- 興味や喜びの喪失
- 意欲や行動力の低下
- 自責感
- 思考や集中力の低下
- 希死念慮(生きるのがつらい、死んだほうがましだ)
体に現れる症状
- 睡眠障害
- 食欲低下
- 疲労感、倦怠感
- 頭痛
- 吐き気
- めまい
- 肩こり
- 便秘
などがあります。
うつ病の原因
- ストレス
- 慢性的な病気
- 脳の活動の変化
慢性的な病気とは、今回解説する脳内出血、脳梗塞、くも膜下出血の総称である脳卒中、がん、神経難病など様々です。
慢性的な病気は、原因が解決しないわけですから、ストレスが溜まるのも当然ですね。
また、慢性疾患の人の約25〜30%の人が、うつを合併しているとの調査結果もあります。
うつ病による脳の活動変化
うつ病になると、脳には2つの問題が生じます。
1つ目は「神経伝達物質の減少」です。
脳内の神経細胞(ニューロン)からは、シナプスを通して神経伝達物質が別の神経細胞に伝わり、脳は心身をコントロールしています。
うつ病になると
- 不安・恐怖のノルアドレナリン
- 睡眠・食欲に関係するセロトニン
といった神経伝達物質が不足したり、働きが低下する事が分かっています。
2つ目は「脳内の血流量が低下」することです。
脳の栄養である糖と酸素は、血流に乗って0.3秒以内に神経細胞に伝わる仕組みがあります。
しかし、うつ病によって脳血流が低下すると、栄養の運搬が遅くなり、結果としてうつ症状を助長します。
これらは、ストレスによって引き起こされ、うつ症状を助長します。
うつ病の推移
厚労省が三年に一度実施している「患者調査」によると、1999年にうつ病で病院に受診した患者数は44.1万人だったのに対し、2014年には111.6万人となっています。
なんと、この15年でうつ病患者数は約2.5倍も増えており、生涯にうつ病になる人は、15人に1人とも言われています。
ストレス社会と言われている昨今。他人ごとではありませんね。
うつと脳内出血
うつ病の原因や症状について述べてきましたが、ここからは「うつ」と脳内出血の関連性を掘り下げていきたいと思います。
脳内出血で「うつ」になる原因は2つ
脳内出血は、脳内の血管が破けて血液が脳に染み出し、神経や脳細胞に障害を来す事で、片麻痺や言語障害が後遺症として残る病気です。
この脳内出血が元で起こる「うつ」には、2つの発生機序があります。
1つ目は、脳そのものの損傷に伴う「うつ」です。
うつに関わる脳の部位は2つあり
- 大脳の前にある前頭葉(意欲や創造、自制心などを司る)
- 脳の中心部にある大脳辺縁系(感情や本能を司る)
脳内出血によりこれらの部位を損傷するか、またはこれらを繋ぐ神経に障害が出ると、ちょっとしたことに怒りっぽくなったり悲観的になったりします。
また、脳内出血によって形成された血腫や脳の浮腫みにより、前頭葉や大脳辺縁系を圧迫し、うつが現れる事もあります。
血腫は1ヶ月ほどで吸収される為、前頭葉や大脳辺縁系にダメージがなければうつは回復します。
ある調査結果では、脳卒中に伴う「うつ」は、発症して3〜6ヶ月に頻度が多くなり、その後は減少するとの報告もあります。
いずれにせよ、脳の障害だけであれば、次第にうつは落ち着く場合が多いようです。
しかし!
再び「うつ」が増え、後遺症として慢性化してしまう原因が、2つ目の発生機序です。
2つ目は、脳内出血によるストレスが生み出す「うつ」です。
- 脳内出血の発症のストレス
- 治療費などの経済的負担
- 通院や治療の負担
- 後遺症が残ることのショック
- 家族に対する罪悪感や先行き不安
など、脳内出血がうつをもたらす影響は実に多くあります。
脳内出血などの発症6ヶ月以降、うつが多くなりやすいのは、病院を出て冷静になって先のことや身体の問題を考えるケースが多い為でしょうね。
脳内出血の後遺症は一生付き合っていかなければいけませんから。
うつが脳内出血の後遺症に与える影響
脳内出血の後遺症の一つである運動麻痺は、発症後3ヶ月が最も回復する時期と言われています。
それ以降も回復する可能性はあるのですが、運動麻痺は早期リハビリがその後の回復過程に大きな影響を与えます。
すなわち、機能回復の為には早期のリハビリが重要という事です。
ですが、この時期にうつを伴うと意欲の減退によりリハビリに積極的になれず、結果的に機能の回復を妨げてしまいます。
また、発症後のみならず、慢性期になっても「うつ」は後遺症に大きな影響を及ぼします。
例えば運動麻痺ですが、麻痺は脳からの指令がうまくいかず、筋肉の緊張をコントロールできないことで、筋肉が硬くなり、自由が効かなくなります。
その硬くなった筋肉を動かさないでいると、筋肉だけでなく関節そのものが固くなって(強直)改善が不可能になります。
慢性期になって関節が固まってしまった人は、大抵リハビリを十分に行ってこなかった人が多いです。その理由の一つにうつがあるんです。
脳内出血の発症後、3週目または6ヶ月後にうつを示した人の半数以上は、1年後もうつが継続していたとの調査結果もあります。
身体的な後遺症はもちろん日常生活に大きな影響を与えますが、それを左右するのは精神状態です。
脳内出血に限らず、脳梗塞やくも膜下出血などの脳疾患の発症により、一生涯残る後遺症が現れれば、うつになってしまうのも無理はありません。
脳卒中後のうつの治療には、服薬が中心となります。
しっかりと薬を飲んで精神状態をコントロールしてリハビリに取り組めば、機能が回復して後遺症は軽くなります!
まとめ
脳内出血や脳梗塞などの発症後に起きるうつは、2つの原因が考えられます。
一つ目は、意欲や創造、自制心などを司る前頭葉、感情や本能を司る大脳辺縁系に障害が生じる為です。
これにより、怒りっぽくなったり悲観的になります。
二つ目は、後遺症に伴うストレスによるものです。
経済的、身体的負担がうつを引き起こします。
脳内出血の後遺症であるうつは、リハビリ意欲の減退により、その後の回復を遅らせてしまう恐れがあります。
脳内出血を含め脳卒中の回復には、早期リハビリがとても重要になります。
運動麻痺や感覚障害は、元通りとはいかなくてもリハビリをすれば、必ず良くなります!
そして、薬の服用と身体機能の向上に伴い、きっとうつ症状も改善するはずです!
私が出会ってきた脳卒中を発症した人達もリハビリを頑張った事で、皆さん前を向いて今を生きています!
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