高血圧が継続すると、様々な病気のリスクが高くなります。
しかし、約3割の人が健診などで高血圧と言われた事があるそうです。その高血圧の中でも二次性高血圧は、原因が明確である為、治療によって改善を図る事ができます!
そこで今回は、二次性高血圧の治療について解説します!高血圧の治療の参考にして下さい!
目次
二次性高血圧とは
高血圧は、文字通り血圧が高い状態です。血圧は、血液が血管の中を流れる時に血管の壁に加わる圧力の事ですが、様々な原因によりこの圧力が強くなっている状態が高血圧です。
診断基準としては、「140mmHg以上/90mmHg以上」に該当すると高血圧となります。
そして、高血圧は大きく二つに分類されます。
一つ目は、「本態性高血圧」です。
本態性高血圧は、原因が明確になっていませんが、生活習慣や肥満などが高血圧の要因になっていると言われています。
二つ目は、今回解説する「二次性高血圧」です。
二次性高血圧は、腎疾患や内分泌疾患など、はっきりとした原因疾患あり、それが元で発症する高血圧を指します。
そして、二次性高血圧を伴う疾患の割合は、腎実質性高血圧が55%、腎血管性高血圧が20%を占めると言われています。
実に、二次性高血圧の原因の半数以上に、腎臓が関わっているという事になります。
二次性高血圧の治療
二次性高血圧の治療は、その原因となっている疾患の治療が重要になります。順にみていきましょう。
腎実質性高血圧
二次性高血圧の55%を占める腎実質性高血圧は、慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、多発性嚢胞腎が原因で発症し、腎機能が低下します。
本来、私たちの体には血液中の塩分(ナトリウム)の量を一定に保つ機能が備わっています。
血液中の塩分濃度(ナトリウム)が高くなると、それを薄めようとして体中の水分が血液中に取り込まれます。ナトリウムは水分と結びつきやすい為、血液量が増えて血管にかかる圧力が強まり、結果高血圧となりやすくなります。
また、腎臓は体の中の余分なナトリウムや水分を尿として排出する役割があります。しかし、高血圧状態が続いて腎臓の機能が低下すると、血圧の調節がうまく行なり、高血圧を伴います。
高血圧から腎機能の低下、逆に腎機能の低下から高血圧になるなど、まさに悪循環となってしまいます。
そして、腎実質性高血圧は塩分の影響を受けやすい食塩感受性高血圧である為、治療には塩分制限が重要です!
他には、薬物治療による血圧のコントロールも必要です。
降圧薬は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬など、レニン-アンジオテンシン阻害薬が必要となります。
それで効きが悪いのであれば、カルシウム拮抗薬、利尿薬、β遮断薬、α遮断薬が使用されます。
これらの薬の作用に関しては、後述します。
腎血管性高血圧
腎血管性高血圧は、腎動脈が細くなる事で腎臓からレニンというホルモンが分泌されて血圧が上がる病気です。
治療には、手術と薬物療法があります。
手術は、細くなった腎動脈を広げる目的で、カテーテルと呼ばれる管を動脈に入れ、バルーンで血管を拡張する、またはステントと呼ばれる網目状の金属製の筒で血管を広げる手術が行われています。
薬物治療には、レニン・アンジオテンシン阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬が使われます。
しかし、両側の腎動脈狭窄がある場合、アンジオテンシン受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬は腎機能の悪化のリスクがある為、禁忌となります。
そのほか、β遮断薬、Ca拮抗薬、α遮断薬も使われます。
原発性アルドステロン症
原発性アルドステロン症は、副腎皮質の腫瘍や全体が腫れて大きくなる過形成が原因で発症します。
これにより、ナトリウムの吸収促進の作用があるアルドステロンという物質が過剰に分泌され、血液量が増えて二次性高血圧となります。
治療は、腫瘍がある場合は、手術による腫瘍摘出を行います。腫瘍がない場合や手術が適応でない場合は、アルドステロン拮抗薬を使用します。
この疾患も食塩の感受性が強い為、塩分の制限が重要になります!
クッシング症候群
クッシング症候群は、原発性アルドステロン症と同様に副腎皮質に腫瘍ができることで発症します。それにより、コルチゾールというホルモンが過剰に分泌されます。
コルチゾールは、ストレスホルモンとも呼ばれています。それは、ストレス(危険)に直面した時に血圧を上昇させて臨戦態勢を整える為に働きます。
従って、過剰なコルチゾールの分泌は、高血圧を引き起こします。
治療は、外科的手術を行い腫瘍を除去します。手術後、副腎皮質の機能が回復するまで、副腎皮質ホルモン薬を服用することもあります。
褐色細胞腫
副腎あるいは交感神経節に腫瘍ができてカテコールアミンというホルモンが分泌される事で発症します。
カテコールアミンは、直接的に心拍出量の増加や血管の収縮に作用します。また、腎臓に働きかけてレニンなどの血圧を上げるホルモンの分泌を促します。
治療は、外科的手術による腫瘍の摘出です。その他、降圧薬を使用することもあります。
甲状腺機能低下・亢進症
甲状腺は、喉仏の下あたりにあり、甲状腺ホルモンを分泌します。
その働きは、細胞の新陳代謝、心拍数・体温の上昇など、体を活発にする事から「元気の源」とも呼ばれています。
甲状腺機能低下・亢進症はいずれも高血圧の要因になり、原疾患の治療で血圧改善の効果が期待できます。
睡眠時無呼吸症候群
肥満などが原因で空気の通り道である気道が狭くなる事で生じます。治療に抵抗を示す高血圧の原因としても頻度が高いと言われています。
治療は、持続性陽圧呼吸療法(ContinuousPositive Airway Pressure: CPAP )といって、専用の医療機器を使用して加圧された空気を気道に送り込んで気道を拡げる治療が用いられます。
ですが、これのみでは二次性高血圧の改善は望みにくい為、減塩や減量など生活習慣の改善も必要です。
二次性高血圧と薬
先述した服薬の治療効果についてまとめてみます。
レニン-アンジオテンシン阻害薬
レニンという酵素は、血圧を上げる作用のあるアンジオテンシンIIというホルモンを作るのに欠かせません。
その機序は、血圧が低下もしくは血液量が減る事で、腎臓からレニンという酵素が分泌されます。
これを発端として、アンジオテンシンIを経てアンジオテンシンIIが作られ、血管を収縮させる事で血圧が上昇します。
レニン-アンジオテンシン阻害薬は、この働きを抑える事で、血圧を下げます。
カルシウム拮抗薬
血圧は、血管が収縮する事で血液の通り道が狭くなり上昇しますが、この収縮の引き金になっているのが、カルシウムイオンです。
カルシウムイオンは、血管の細胞内に流れ込む事で収縮を促します。
カルシウム拮抗薬は、カルシウムイオンが流れ込んでくるのを防ぐ事で血管の拡張を促し、血圧を下げる効果があります。
アルドステロン拮抗薬
アルドステロンは、ナトリウムの吸収を促進して血液量を増やす物質です。アルドステロン拮抗薬は、この物質が受容体と結合するのを防いで血圧を下げる効果があります。
利尿薬
利尿薬は、尿量を増加させる作用のある薬の総称です。腎機能が正常であれば、体内のナトリウムや老廃物は、尿として排出されます。
しかし、腎機能が低下すると排出が不十分となり、体内の水分量(血液量)が増え、高血圧となります。この改善のため、利尿薬が使われます。
β遮断薬
血圧を収縮させる交感神経は、ノルアドレナリンがβ受容体に結合する事で興奮し、血圧を上昇させます。β遮断薬は、この結合を遮断する薬です。
α遮断薬
血管にあるα受容体は、交感神経の伝達物質であるノルアドレナリンと結合する事で血管を収縮させます。この結合を遮断するのがα遮断薬です。これにより、血管は拡張されて血圧が下がります。
α・β遮断薬は、どちらも交感神経と受容体の繋がりを遮断して、血圧を上げる作用を抑制する作用があります!
二次性高血圧の治療で大切な事!
二次性高血圧の疾患には、血圧を調整する臓器である腎臓が関連した疾患が多く、塩分への感受性が高いのも特徴的です。
ですから、二次性高血圧の治療には手術や服薬での治療と並行して塩分のコントロールを行う事が重要です!
高血圧と言われている方の場合、日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2009」における減塩目標値は1日6g(小さじ1杯)未満と言われています!
一般的な醤油ラーメンに含まれる塩分は6〜7g程度と言われています。高血圧の人は、ラーメン一杯完食ですでに塩分オーバーになってしまいます!
それだけラーメン(特にスープ)には塩分が多く含まれているという事ですね。
他にも普段口にしている食べ物には意外と塩分が多く含まれています。
体を守る為にもこまめにチェックしてみてはいかがでしょうか?
まとめ
二次性高血圧は、原因疾患が明確である為、それぞれの疾患の治療を行う事で改善が可能です。
治療には主に、外科的手術と服薬によるものがあります。また、塩分の摂取量や肥満など生活習慣が関連する二次性高血圧の原因疾患もあります。
いずれにしても、医学的な治療に加えて生活習慣を改める事が、治療効果を高めるために必要なのは言うまでもありません。
健康も病気も、日々の積み重ねから生まれます!
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