日本人の死因の上位にある脳卒中。
脳内出血は脳卒中の一種ですが、重度な後遺症や寝たきりにもなる怖い病気です。
脳内出血を発症した場合、後遺症が残る確率が高いのですが「後遺症なし」まで回復する確率はどれくらいなのでしょうか?
そこで今回は、脳内出血を発症した際『後遺症なし』まで回復する確率について、実体験も交えて解説します!
目次
脳内出血”後遺症なし”まで回復する確率は若年者ほど高い!
脳内出血は脳の中で血管が破けて出血を起こし、脳細胞が損傷する脳卒中の一種です。
また、脳内出血に限らず脳の神経や血管に異常が起きると、発症直後は麻痺や感覚障害などが現れる可能性が非常に高いです。
そして厄介なのが、一度死んだ脳細胞は元に戻らないのです。
え?じゃあ脳内出血を起こしたら後遺症なしっていうのはあり得ないって事!?
と思うかもしれませんが、完全に後遺症なしまで回復するとは一概に言えませんが、限りなく元の生活に近い状態まで回復する可能性はあります。
その理由は、一度ダメージを受けた脳細胞は回復しないものの、リハビリで周囲の神経を活性化させる事で機能回復に繋がるからです!
一般に、脳卒中というと手足の麻痺や言語障害などの大きな障害が残るというイメージがあるが、就労世代などの若い患者においては、約7割がほぼ介助を必要しない状態まで回復するため、 脳卒中の発症直後からのリハビリテーションを含む適切な治療により、職場復帰(復職) することが可能な場合も少なくない
引用元:厚生労働省資料より
ちなみに、上記の厚生労働省の資料によると40歳以下の脳卒中発症者では、約40%の人が完全自立(※)まで回復すると記載されています。
※完全自立とは、後遺症がないかあっても日常生活や社会生活に問題がない状態。
この確率や割合は年齢とともに低下していき、65歳以上では約20%の人しか完全自立まで回復できず、40歳以下の人達の半分まで減少してしまいます。
脳内の病変による後遺症の程度は、ダメージ部位や程度によって異なってきますが、若い人ほど後遺症なしまで回復する可能性は高いという事ですね。
高齢者と比較して、細胞の新陳代謝や神経の活性化が起こりやすいのだと思います。
ですが注意して欲しいのは、若くして脳内出血を発症するという事は、短期間でそれだけ脳にダメージを負ってるって事なんです。
それは元々血管が脆弱なのかもしれないし、過度なストレスや悪しき生活習慣で血管に過剰な負荷が掛かっているのかもしれません。
特に脳内出血の原因で最も多いのが高血圧で、その確率は約60%を占めると言われています。
高血圧ガイドラインによると
生活習慣の修正は、それ自身による降圧効果が期待されるだけでなく、高血圧予防の観点からも重要である
引用元:高血圧ガイドライン
とあるように、脳内出血を防ぐためには生活習慣を整える事が必須になります。
そもそもの病気を防ぐ事ができれば、後遺症が残る確率はゼロです。当然ですよね。
脳内出血(脳卒中)は後遺症が残る確率は高いが、若年者ほど「後遺症なし」まで回復する確率が高い!特に40代
出血の量でも「後遺症なし」の確率が変わる
脳内出血に伴う出血の量も後遺症が残る確率に大きく影響してきます。
「回復期機能予後からみた被殻出血 314 例の急性期治療方針の検討」という論文では、脳内出血の中でも発症率の高い被殻出血の患者を対象に、退院時の自立度を調査しています。
以下は、血腫量(出血の程度)に伴う自立度の確率を表にしたものです。
血腫量 | 人数 | 確率 |
20㎖以下 | 107人中48人 | 約49% |
20~39㎖ | 100人中22人 | 約22% |
40~59㎖ | 48人中6人 | 約13% |
60~79㎖ | 40人中2人 | 約5% |
80㎖以上 | 19人中0人 | 0% |
結果は、血腫量が少ない程、退院時の自立度が高いという結果となりました。
つまり、脳内出血時の出血量が少なければ(軽度)、自立度は高くなるという事ですね。
ちなみに、出血量に関わらずトータルで見ると314人中78人が自立で屋外歩行ができるまでに回復しています。
その確率は約25%です。反対に見れば、後遺症が残り自立度が低下した人は残りの約75%です。
これらの数値だけをみると、脳内出血(被殻出血)を起こした人のうち、屋外を自立歩行できるようになった人は3割にも満たないという結果となりました。
しかし、この結果は必ずしも屋外歩行の自立=後遺症なしではありません!
というのも、一人で外を歩けたとしても杖や下肢装具を必要としているかもしれないからです。
街中で杖や下肢装具を使用して歩いている人を見かけた事ありませんか?
僕がリハビリを担当している脳卒中の利用者さんで装具・杖を必要としない方は、1割ほどしかいません。
それ程、脳の病気による後遺症は深刻なものなんです。
生活習慣病は脳内出血の確率を高める
先述したように、生活習慣は高血圧の原因となり、脳内出血の確率を高めてしまいます。
ちなみに、高血圧が脳内出血の発症に直結している割合は約8割を占めます!
更に、高血圧は生活習慣が大きく関与していると言われている事からも、意識1つで防げる確率はグッと高くなります!
生活習慣病が脳内出血はじめ心臓病やがんの発症の確率を高める事は、こちらの記事でも解説しています。
高血圧が脳内出血発症の確率を高める理由
先述したように、高血圧が慢性化すると脳血管には強い圧がかかり続けて変性して脆くなります。
血管は元々柔軟性に富んでいるのですが、負担がかかり続けると硬くなってしまうんです。
ワンピースという漫画で、ゴム人間になった主人公のルフィを例に出してみます。
作中、体内の血流を意図的に速くする事で、俊敏に動けるようになる必殺技があります。
これは、血管もゴムで出来ているルフィだからこそ、過度な血流(高血圧)に耐えられる為なんです。
普通の人間なら血管爆発してますね(笑)
つまり、血管が硬くなると圧に耐えなれなくなって破けてしまい、脳内出血を発症しやすくなるという話です。
また、脳内出血は比較的細い血管に起こりやすく、被殻や視床といった脳の深部に起こる確率が高くなります。
脳内出血は冬に発症の確率が高くなる
脳卒中には脳内出血の他にも種類があるのですが、それぞれ発症しやすい時期があります。
脳血管が詰まるタイプの脳梗塞は、水分不足で血流が悪くなりやすい夏場に確率が高くなります。
脳血管が破れるタイプの脳内出血(脳出血、くも膜下出血)は、血管が収縮しやすい冬場に確率が高くなります。
高血圧を放っておくと脳内出血の発症の確率アップ
脳内出血は、高血圧の人が発症する確率が高いのですが、特に治療が不十分な場合に生じやすいんです!
要は、血圧が高くなっても放置してる人ですね。
また、仕事中や運動時などの日中活動時に突然発症し、数分〜数時間で急速に増悪します。
そして、脳内出血発症後6時間以内は出血が拡大する危険が高くなります!
ですから、症状が現れた時は、早急に病院に行かないと重い後遺症が残る確率が高くなります。
脳内出血「後遺症なし」の確率を高める為に効果的なのは予防!
様々な調査結果や僕のこれまでの経験から見ても、脳内出血を発症すると目に見える後遺症が残る可能性が高いのが事実です。
その為、「後遺症なし」の確率を高める為に必要なのは予防です。
特に高血圧などの生活習慣病は発症リスクをダイレクトに高めていくので、未然に防ぐという意識づけを持っていきましょう!
高血圧の改善に関しては、こちらの記事で詳しく解説しているので参考にして下さい。
将来、脳卒中(脳内出血含む)を発症する確率が分かる!?
実は、将来脳内出血を含む脳卒中を発症する確率を調べることができる計算方法があります。
下記の算出方法は「日本生活習慣病予防協会」のホームページに掲載されているものです。
一度試しに計算してみて、自分が脳卒中を発症する確率を調べてみてはいかがでしょうか。
まとめ
脳内出血を発症した場合、就労世代などの若者であれば自立レベルまで回復する確率は約70%。
しかし、ほぼ後遺症なしまで回復する確率は約40%程です。
加齢とともにこの確率は減少するし、若者でも半数以上には後遺症が残る確率が高くなります。
脳内出血の原因の約8割が高血圧で、その高血圧を引き起こす要因は生活習慣です。
日々の生活を後遺症で不自由にさせない為にも、健康なうちから自分の体を大切にしていきたいですね。
高血圧予防には運動が必須です!ただし、高血圧の人が運動をする場合は注意しなければいけないこともある為、こちらの記事を参考にして下さい。