ひとの脳は非常に複雑な機能を担っている為、脳疾患を患うと多種多様な症状を伴います。
今回は、数ある脳疾患の中でも比較的発症率の高い脳梗塞、脳出血、くも膜下出血(総称して脳卒中)の症状と原因について書いていきます。
脳疾患を発症すると待ち受けているのは後遺症との過酷な戦いです。その為、少し理解を深めていきましょう!
目次
脳疾患とは!?
脳と一言で言っても役割によって大きく大脳・小脳・間脳・脳幹に分かれており、それぞれに違った機能があります。
私達が普段当たり前のように不自由なく生活が送れているのも、それらの脳(厳密には、脊髄や筋骨格なども含みます)が正常に働いているからなんです!
例えば、目の前にあるペットボトルを掴んで水を飲むという動作を行うとしましょう。
- ”喉が渇いたから水を飲もう”という意志が働き、対象物を見ます
- ”目の前のペットボトルに手を伸ばそう”という行動の計画を立てます
- ペットボトルに手を伸ばして掴むという運動の計画を立てます(過去の記憶を基にしています)
- ペットボトルに手を伸ばします。運動の実行です。
- 仮に、想像していた状況と違った(意外に重かった、暑かったなど)場合、運動の微調整を行います。
- そのペットボトルの特性や身体の動かし方を記憶することで、動きのバリエーションが増えます。
一つの動作を行うだけで、これだけの過程が無意識に脳で処理されています!これだけ、緻密な役割を担っていますから、脳疾患によって脳を損傷してしまうと生活への支障は大きいと言えます。
また、人間ならではの知性や言語を司っている事もあり、脳疾患による症状は本当に多種多様です。
今回お話する脳疾患である脳梗塞、脳出血、くも膜下出血は、脳の損傷により、これらの機能に何かしらの支障をきたしてしまいます。
脳梗塞
血管が詰まったり細くなると、血流が滞って脳への栄養や酸素が不足し、脳細胞がダメージを受けてしまい、様々な症状が出現します。これは、心臓やその他の血管で出来た血液の塊が脳に流れて発症するケースもあります。
もう少し分かりやすく説明してみますね。例えば、ホースで水を出すとします。水が血液、ホースが血管という事になりますが、ホースを踏んだら水は止まってしまいますよね?また、ホースが細くなっていたり、中に石が詰まっていた場合も水の流れは悪くなります。
これが、脳疾患の一つである脳梗塞です。
脳出血
脳の中にある血管が破けると、血管の外に血液が漏れて脳内で浸出し、更にその血液が塊になることで周囲にある脳細胞を圧迫し、様々な症状が出現します。
こちらもホースで例えると、ホースに穴が空いて水が漏れ出してしまうと、ホースの出口以外の場所が濡れてしまいますよね。血液の場合は固まってしまいますから、これによって神経などの組織を圧迫してしまいます。
くも膜下出血
脳は豆腐のように柔らかい為、外側(頭蓋骨)から硬膜、くも膜、軟膜という三層の膜が張られて守っています。
また、脳は脳脊髄液という液体に浮かんでおり、これによって衝撃を和らげることができます。
よく、ボクサーが会心の一撃を喰らった時に「脳みそが揺れた」と表現することがありますが、これは液体の中で脳が揺れたということになります。
そして、くも膜下出血はくも膜と脳の間にある血管に出来た瘤(動脈瘤)が破裂して脳脊髄液の中に血液が漏れ出してしまい、脳の組織を侵してしまう病気です。
脳疾患の症状には、どんなものがある?
では、脳疾患の症状にはどんなものがあるのでしょうか?
脳疾患の種類や侵された場所によっても異なりますが、大きく分けると身体麻痺、感覚障害、言語障害、高次脳機能障害などの症状が表れます。
身体麻痺
脳疾患の代表的な症状と言っても過言ではありません。脳は右脳と左脳に分かれていますが、それぞれ反対の手足の運動や感覚を司っています。つまり、右脳は左半身、左脳は右半身の担当という事です。ですから、侵された脳と反対の半身に麻痺が生じます。
身体麻痺は、筋肉や組織が主に侵されるのですが、症状は硬くなる部分と柔らかくなる部分が混在して表れる傾向があります。
硬い麻痺は、一定の状態で固まっていることが多く、力のコントロールが難しい為、動作が努力的になってしまいます。手足に思いっきり力を入れたまま近くの物に手を伸ばしてみてください。かなり効率が悪く、疲れてしまいますよね?
この麻痺で厄介なのは、動かさないでいると固まって動かなくなってしまうことです。
反面、柔らかい麻痺は、脱力したように力が入らない為、動かす時は手足が鉛の様に重く、体重を支える時は脱力して膝が抜けてしまい、転んでしまう危険があります。
また、重力の影響で肩が少し外れてしまい(亜脱臼)、より不安定な身体となってしまいます。
感覚障害
感覚は、触っている感覚、身体が動いている感覚、温度や痛みを感じる感覚などがあります。運動と感覚は表裏一体という様に、動けるのは感覚が分かるからですし、反対に感覚が分かるのは動いているからです!
脳疾患により感覚が分かりにくくなると、力の入れ具合が分からない、体重が乗っているかが分からないから歩きが努力的になってしまう、痛みや熱さが分からないとケガを予防できないなどの生活への支障が出てしまいます。
私はいたって健康ですが、実は感覚障害に似た経験をした事があります。それは、腕を圧迫して寝てしまった時です。腕を身体の下敷きにして寝てしまうと、起きた時には感覚がなく、自分の腕がどこにあるのかも分からず、鉛のように重く感じました。
言語障害
言語障害には、二つのタイプがあります。
一つ目は、のどや舌、口周りの器官がうまく使えない為に呂律が回らなかったり、声が出にくいなどの症状が出る構音障害です。これは、脳の言葉を話す運動を司っている部分の損傷によって生じます。
二つ目は、話すのに必要な筋肉などに問題はないも他者の言っている事が分からない、話せない、読み書きができないなどの症状が出る失語症です。構音障害が言語に必要な運動を担っている部分の問題であるのに対し、失語症は言語中枢の障害です。
例えるなら、言葉の分からない外国に突然投げ出された状況をイメージして頂くと分かりやすいかもしれません。考えただけで怖くなってしまいますよね。
高次脳機能障害
高次脳機能とは、記憶や学習、思考や判断などを総称し、この機能に特化している事がヒトの本質と言えます。他の動物とヒトとの決定的な違いは、この高次脳機能にあります!はやい話が、その場に適した行動を臨機応変にこなすのが高次脳機能です。
だからこそ、貧弱な人ヒトは今日まで生き抜き、文明を築いてこれたわけですね。
具体的な症状としては、
- 記憶障害:自分のいる場所、とった行動が分からないなど。
- 注意障害:集中力が低下し、気が散りやすくなる。
- 失行:道具の使い方が分からないなど。
- 失認:物の色や形などを認識できないなど。
- 失語:言語障害の項目を参照のこと。
- 半側空間無視:片側の空間の認識ができない。左側の無視の場合、左の食べ物を残してしまう。左側にぶつかりやすいなど。
- 遂行機能障害:考え、計画的な行動ができない。行き当たりばったりになって失敗が多くなる。
- 感情コントロール困難:怒りっぽくなり、子供のような態度をとるなど、多くは病前と性格がガラッと変わってしまう事も
が挙げられます。
個人的にはこの症状が最も過酷ではないかと思っています。
というのも、麻痺や言語障害は症状として形に表れやすく、他者にも理解されやすいですが、高次脳機能障害は身体機能に目立った症状がない場合、上記の症状が単におかしな行動という風に他者の目に映ってしまい、病気としての理解を得ることが難しいからです。
これらは、病巣の範囲や程度によって症状の表れ方も多種多様です。
脳疾患を発症する原因って何?
脳疾患を発症する原因として最も多いのが高血圧です!
高血圧は、長年の蓄積により動脈硬化へと発展し、血管が脆くなることで、破れやすい、詰まりやすいといった脳疾患の原因を伴います。また、他の原因である喫煙、肥満、糖尿病は結局、高血圧に繋がっていきます。
これらを見ていくと、共通していることは生活習慣が関係しているという事です!中でも、高血圧・肥満・糖尿病は食生活と運動習慣が大きく関係しています。塩分・油物の摂りすぎや食べ過ぎはこれらの原因となるので要注意です!
今回、脳疾患の中でも脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に的を絞ったのは、原因が明確=予防ができるという理由からです!他の記事でも何度も言っていますが、生活習慣の見直しが健康でいられるか、病気(ここでは、脳疾患)を招くかの境界線になっていると思います。
まとめ
私たちが何不自由なく行動できているのは、脳の複雑な機能が柔軟に活動している結果です。しかし、脳疾患を発症すると、運動麻痺や感覚障害、言語障害や高次脳機能障害など脳の複雑な機能の代償としての多種多様な症状を招き、生活に大きな悪影響を及ぼしてしまいます。
ですが、脳疾患の原因をみていくと、生活習慣を見直す事で十分に予防ができるので、今一度生活習慣を見直してみましょう!
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