一過性脳虚血発作は、脳の血流が一時的に減少する虚血性の脳疾患です。
一過性である為、症状こそ収まるものの、脳梗塞の危険を知らせる重要なサインです!
症状が収まったからと安心していると、脳梗塞に発展し、後遺症が永続的に残ってしまいます。
今回は、虚血性(血流の減少)の脳疾患である一過性脳虚血発作の予防について解説します!
一過性脳虚血発作とは?
一過性脳虚血発作は、血流が減少する虚血性の脳疾患の事で、「TIA」とも呼ばれており、transient(一過性の)ischemic(血流が乏しくなる)attack(発作)を意味します。
これにより、運動麻痺や感覚障害、呂律(ろれつ)が回らないなどの言語障害など脳梗塞と同様の症状が出現しますが、24時間以内もしくは数分以内に完全に消失するものを言います。
しかし、症状が消失するとは、どういう事なのでしょうか?
一過性脳虚血発作は、先述しましたが一時的に脳が虚血状態になる事を言います。
この原因は、大きく2つあります。
一つ目は、動脈硬化によって血管の中に出来た血栓(血の塊)が、脳の血管に移動して詰まらせてしまうものです。
脳梗塞が血管を完全に詰まらせてしまい、後遺症が永続的に残ってしまうのに対し、一過性脳虚血発作は、血栓が小さく不完全な詰まりの為、血栓が自然と溶けて消失する事で再び血流が回復します。
結果、症状は一過性となります。
この動脈硬化に、急激な血圧の低下が加わることでも一過性脳虚血発作は起こります。
え?血圧は高くなるのが問題になるんじゃないの?
と思う方もいるかもしれませんが、虚血性の脳疾患である一過性脳虚血発作は、動脈硬化によって血流が悪くなっている状態に、急激な血圧の低下が加わる事で、脳が虚血状態となってしまいます。
二つ目の原因は、心臓の病気によるものです。
後述もしますが、心房細動という病気で心臓の機能が低下すると、血栓ができやすくなり、それが脳の血管に流れて詰まりの原因となります。
症状は一過性ではありますが、脳疾患は脳の病気の一つと考えても良いかもしれません。
また、症状が収まったから一安心!と悠長な事を言ってられません!
その理由は
「一過性脳虚血発作を起こしてから、約1〜2割の人が3ヶ月以内に脳梗塞に発展」しています。
更に
「脳梗塞に発展した人の約5割近くが、一過性脳虚血発作を起こしてから数日以内に発症」しているんです。
それだけ一過性脳虚血発作を起こすと脳梗塞のリスクが既に高まっているという事です。そして、一過性脳虚血発作を起こしてから、48時間以内が最も脳梗塞発症の可能性が高いと言われています!
ですから、脳梗塞の予防を考えた場合、一過性脳虚血発作を起こした後の迅速な対応が求められます!
一過性脳虚血発作は、脳梗塞になる直前の最終警告です!
脳梗塞を発症した人の中には、予兆などがなかった人もいる為、一過性脳虚血発作を起こした場合はむしろポジティブに捉えて48時間以内に必ず病院に行きましょう!
ちなみに私の父も以前、一過性脳虚血発作を起こしたことがあります。その時は、突然の痺れ(感覚障害)や手足の脱力(麻痺)により、パニックになっていました。
当時、私も同じ場所にいたのですが、脳疾患の知識などまったくなかった為、「何を大げさにしているのだろう」とまったくの他人事でした。実の父親であるにも関わらずです。
今思えば、あまりにも知識が乏しかった為、大変な病気というのは、意識を失うとか血を流すとかそういった症状の時だけだと楽観的になっていたのだと思います。
すぐに病院に受診し、治療を始めた為、幸いにも脳梗塞への発展はありませんでした。それ以降、食生活や運動など再発の予防に取り組んでいます。
現在はスマホの操作や仕事も問題なくこなすことができています。本当に幸せなことです。
一過性脳虚血発作を起こした後、脳梗塞に発展するリスクを数値化するABCD²スコアという方法もありますので、参考までにチェックしてみるのも良いと思います。
各項目を足した合計点が高いほど、一過性脳虚血発作を起こした後のリスクが高いという事になります。3~4点以上の人は要注意です!
一過性虚血発作の要因
先述したように、一過性脳虚血発作の要因は、動脈硬化(血管の病気)と心房細動(心臓の病気)ですが、これらを生み出す根本的な問題が、高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙です。
具体的にみていきましょう!
高血圧
高血圧による継続した血管への高負荷により、次第に血管の弾力が失われて動脈硬化へ発展します。
原因としては、塩分やアルコールの過剰摂取や喫煙、ストレスなどが挙げられます。ですから、予防にはそれらの節制が必要です。
また、こまめな血圧の測定で自分の健康状態をチェックする事も必要です!
血圧の基準値は、「140mmHg未満/90mmHg未満」です!
脂質異常症
脂質異常症は、悪玉といわれるLDLコレステロールや血中の中性脂肪が過剰に増加する、又は善玉と呼ばれるHDLコレステロールが減少した状態の事を言います。
これにより、血管内にプラークと呼ばれる異物が溜まっていき、血管内が狭くなる事や血管を傷つけることで動脈硬化へと発展していきます。
原因としては、脂っこいものの摂りすぎやアルコールの過剰摂取です!
青魚やオリーブ油に含まれる不飽和脂肪酸という脂質が悪玉コレステロールを下げる効果があり、野菜に含まれる食物繊維は、悪玉コレステロールの排出を促してくれます。
基準値は
- LDL(悪玉)コレステロール :65~139mg/dl
- HDL(善玉)コレステロール :40~90mg/dl
- 中性脂肪 :30~149mg/dl
糖尿病
糖尿病は、インスリンと呼ばれるホルモンの作用が不十分になる事で、体内に取り込んだブドウ糖をうまく代謝できなくなり、血液中にブドウ糖が停滞している状態を言います。
これにより、血管が痛み動脈硬化となる事で血流が阻害されます。そして、脳卒中や心筋梗塞などのリスクが高くなります。
基準値は
- 空腹時血糖が100mg/dl未満
- 常時血糖が140mg/dl未満
- HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)6.5%未満
HbA1cとは、過去1〜2ヶ月間の血糖値を表します。
心房細動
本来、私達の心臓は規則正しいリズムでポンプのように収縮と拡張を繰り返して血液を全身に送り出しています。
しかし、何かしらの原因で心臓が震え不規則な収縮になると、血液の流れが乱れ、心臓に血液が留まってしまう事があります。
この血液が固まり、脳の血管に移動してしまうと脳梗塞を発症してしまいます。胸の不快感や動悸、息苦しさなどの症状を伴います。原因としては、高血圧や糖尿病が元にあるようです。
喫煙
タバコに含まれているタール、ニコチン、一酸化炭素は、血管を収縮させる作用がある為、血圧が高くなりやすいです。
また、血管を傷つけたり、悪玉コレステロールを増やしてしまう効果もある為、高血圧と合わせて動脈硬化を誘発します。
一過性脳虚血発作の予防
一過性脳虚血発作の予防で考えなければいけない事は、基本的には脳卒中の予防と同じです。この両者は、程度の違いがあるだけで、発生機序は同じだからです。
ですから、先述してきたように生活習慣の改善が必須になります!中でも食生活と運動は、とても重要です!
食生活は、主食・主菜・副菜のバランスを考え、塩分の過剰摂取やカロリーの摂りすぎに注意しましょう。
運動は、高血圧や動脈硬化の原因となる肥満の予防にもなりますし、血糖のコントロールにも効果的です。ただ、運動で大切なのは、継続です!
継続しなければ、どんな運動も意味がありませんからね。ですので、いきなりキツイ筋トレをするのではなく、軽いウォーキング(30分程度)から始めていくのが良いと思います。
同じ道ばかりを歩いていては、飽きてしまいますから、色々なコースを歩いてみると飽きず、新しい発見などもあっておもしろいですよ。
また、外でのウォーキングは刺激量も多い為、脳の活性化にも効果的ですし、それだけエネルギーを消費することになりますから、より運動の効果を高めてくれます!
一過性虚血発作の予防を意識する事は、結果的に脳疾患の予防に繋がります。
まとめ
一過性脳虚血発作は、虚血性(血流が減少)の脳疾患です。
症状として、運動麻痺や感覚障害、言語障害などを伴いますが24時間以内に消失します。しかし、一過性脳虚血発作を起こすと、数日~数か月以内に脳梗塞を発症する可能性があります。
また、48時間以内の発症リスクが最も高くなります。
原因としては、動脈硬化と心臓疾患があり、これらの根本的な問題となるのが、高血圧、糖尿病、動脈硬化、喫煙です。
これらの予防で共通することは、どれも生活習慣の見直しが必須です!
食生活の改善と運動習慣を身に着けて脳疾患の予防に努めましょう!
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