高血圧は自覚症状がない為に軽視されがちですが、後遺症が深刻な脳卒中や死に至る事もある心疾患の発症リスクを高めます。
薬を飲めば一時的に血圧を下げる事は可能ですが、根本的な解決にはならない上に薬との長い付き合いが始まります。
その為、予防と対策を講じて高血圧の根本を叩く事が必須となります!
そこで今回は、高血圧の予防と対策で大切な2つのポイントについて解説していきます。
目次
高血圧の予防と対策2つのポイント【肺活量】と【血管】
皆さん、高血圧の予防・対策の必要性って考えたことありますか?
高血圧は、何らかの原因によって血管の中を流れる血液の圧力が慢性的に高くなった状態。
高血圧ガイドラインでは高血圧の数値基準を
- 診察室血圧 140/90mmHg以上
- 家庭血圧 135/85mmHg以上
としており、日本WHO協会によると2015年には男性 4 人に 1 人、女性 5 人に 1 人が高血圧症と言われているそうですよ。
本態性高血圧は生活習慣、二次性高血圧は病気が原因と言われており、高血圧の約9割は本態性高血圧と言われている。
二次性高血圧は、病気の二次的な症状で発症する。
二次性高血圧に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。
今回は本態性高血圧に着目し、高血圧ガイドラインや加藤雅俊先生の書籍を参考にして予防と対策方法をお伝えしていきます。
まず抑えておくべき2つのポイントは
- 心肺機能(肺活量)
- 血管の柔軟性
この2つが高血圧の予防と対策で非常に重要なポイントになります!
どういう事か分かりやすく解説していきますね。
肺活量を高める
心肺機能は肺活量の事。簡単に言えば一度の呼吸でどれだけ酸素を取り込めるかということ。
一度に吸い込む酸素の量が少なくなれば脳や筋肉は酸欠になってしまう為、心臓が心拍数を高めて酸素を一生懸命送り出します。
結果として血管への圧を強めてしまい高血圧となってしまうんです。
なので、肺活量を高める事は高血圧の予防と対策で重要な一つ目のポイントになります。
血管の柔軟性を高める
高血圧の予防と対策二つ目のポイントは血管の柔軟性です。
血管には平滑筋という自律的に動く筋肉があり、この筋肉の伸縮によって血液をスムーズに送り出すことができるんです。
筋肉は、ポンプの作用で血液を全身に送り届ける重要な役目があるんです(^^)
ただ、血管の筋肉の柔軟性は血流に左右されるので、血流が悪くなると硬くなってしまうんです!
どういう事かと言うと、血管の内側からは一酸化窒素(NO)と呼ばれる物質が放出されています。
NOは血流が速くなるほどたくさん放出され、その分血管も柔らかくなるんです。
つまり運動するほど血管は柔軟性がアップするってわけ(^^)
逆に言えば、運動しないと血管は硬くなって高血圧の要因になるのです!
高血圧の予防と対策には【運動】が不可欠!
以上を踏まえると、高血圧の予防と対策に運動は不可欠と言えます!
その為、今回は高血圧との関連性も深い運動に着目し、リハビリの専門家としての観点も交えながら予防と対策方法をお伝えしていきます!
ストレッチ
心肺機能を強化するには、呼吸の質を上げなければいけません!
と、呼吸の質と言われてもピンとこないですよね?
簡単に説明します^ – ^
安静時の呼吸は、外肋間筋や横隔膜という筋肉がメインに働いています。
しかし、心肺機能が衰えたり、猫背などの不良姿勢で呼吸が浅くなると、外肋間筋や横隔膜が働きにくくなり、その働きを補う為に首や胸にある筋肉が働きます。
ですが、これらの筋肉は長時間働ける筋肉ではない為、すぐに疲労が蓄積してしまいます。
結果、肩こりや頭痛に繋がってしまうんです。
簡単に言えば
姿勢が悪くなると肩や首の筋肉が硬くなって心肺機能が衰える
って事です。
なので、まずは首や肩周りの筋肉をほぐし、呼吸を楽に行える状態にする事が大切です!
1.首(胸鎖乳突筋、斜角筋)のストレッチ
- 手で側頭部を抑える
- 首を横に倒す(※この時、首は前には倒さず、真横に倒す事を意識する)
- 20秒キープ
- 反対も行う
- 呼吸を止めない
- 首は真横に倒す
- 痛気持ちいところでキープ
2.胸(大胸筋)のストレッチ
↓
- 両手を頭の後ろで組む
- ゆっくり肘と肘を離すように胸を開く
- 少し背中を反る(不安定になったり、痛みが出る人は反らずに行います)
- 20秒キープ
- 呼吸を止めない
- 腰は反らない
- 痛気持ちいところでキープ
3.脇腹(肋間筋)のストレッチ
- 手で反対の肘を掴む
- 肘ごと体を倒して脇腹を伸ばす(※体は真横に倒すことを意識する)
- 20秒キープ
- 反対も行う
- 呼吸を止めない
- 痛気持ちいところでキープ
筋肉をほぐしたら深呼吸
ストレッチで呼吸をしやすくなったわけですから「深呼吸」も忘れず行いましょう!
(動脈硬化など血管に異常が生じていない場合)ストレッチと深呼吸だけでも継続すれば血圧は下がります。
実際、僕の担当している利用者さんに上記のストレッチと深呼吸を行ってもらった後に血圧を測定すると、即時的な効果ではありますが、3〜5mmHgの降下が認められる方もいらっしゃいます。
個人差はありますが、継続すれば効果は期待できますよ(^^)
有酸素運動
呼吸の準備ができたら今度は運動です。
高血圧ガイドラインでは、高血圧の修正項目として
軽強度の有酸素運動を毎日30分、または180分/週以上行う
事を推奨しています。
軽強度は、軽く息が切れる位の負荷量と思ってもらえれば大丈夫です。
有酸素運動でオススメなのは、導入しやすいウォーキング、屋内では踏み台昇降や足踏み運動がオススメです( ^ω^ )
ある調査では
本態性高血圧患者12人を対象に自転車エルゴメーターで1日60分間週3回の運動を10〜20週行った結果、10週目には50%の患者で20/10mmHg以上の降圧があり、20週目では同等の降圧が78%認められた
との結果が出たそうです。
有酸素運動は、先述した心肺機能の強化と全身運動による血行の促進により血管の柔軟性向上に効果が期待できます。
そして大切なのは無理なく継続すること!
継続できれば効果は必ず現れてきます。
こちらの記事では、高血圧の予防と対策にウォーキングがおすすめなポイントを詳しく書いていますので、チェックしてみて下さい!
高血圧の予防と対策には食事も重要
ここまで運動について論じてきましたが、高血圧は生活習慣の乱れが引き金になります。
高血圧ガイドラインにおいても
生活習慣の修正は、それ自身による高圧効果が期待されるだけでなく、高血圧予防の観点からも重要である
引用元:高血圧ガイドライン
と記載されています。
特に毎日必ず行う食事で注意して欲しい点は
- 糖質
- 塩分
- 栄養の偏り
上記の3点です。
食事の高血圧対策についてはこちらで詳しく解説しているのでご覧ください。
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他にもストレスや喫煙も血管の柔軟性低下に関わってくるので、運動と食事を中心として生活習慣の見直しを考える事は高血圧の予防と対策には非常に重要となってきます。
見過ごされがちな高血圧
高血圧は軽視されてしまう事が多いです。
僕が担当している利用者様の中で、約8割の方が高血圧に関連する薬を飲んでいます。
そして、そのうちの約4〜5割の方は既に脳卒中や心臓関連の病気(不整脈や心不全)を発症しています。
もちろん高血圧だけが原因ではないと思いますが、病気の発症に関係している可能性は高いと思います!
で、ここからが重要なのですが、既に脳卒中や心疾患をお持ちの方に、病前の生活習慣を聞いてみたところ
- ヘビースモーカー(1日平均1箱。1日2箱なんて人も!)
- 過度の飲酒
- ファーストフードや肉食
- 毎日過重労働
- 朝まで飲んで睡眠不足
などの生活習慣となっていました!
特に、タバコとお酒はセットって方が多かったですね(^^;)
そして高血圧だったのにも関わらず、生活習慣の改善や継続した薬の服用をしていなかったという人もいました。
厚生労働省によると、日本には1010万800人の高血圧患者がいるとされています。
日本人の人口は約1億人(正確には1億2659万人(H30.7.1現在 総務省調べ))なので、大体日本人の約1割が高血圧って事になりますね。
ですが、医療機関に受診していない高血圧の人も含めると、その数は約3000万人にのぼると言われています。
自覚症状がほとんどないから放置してしまい、頭痛や息切れ、動悸、頻尿などの症状が現れた時には血管はかなりボロボロになっている可能性があります。
そして、ある日突然病気を発症してしまうんです!
これだけ見ると、高血圧の予防や対策を行なっている人って多くはないんだなと実感しますね…。
高血圧を予防・対策すれば病気のリスクを減らせる!
ここからは、高血圧を放置すると発展する病気の怖さについて解説します。
無自覚な事が多い高血圧ですから、放置するとどうなるのかを知ることは、予防と対策を本気で考える上で重要ですからね!
高血圧で発展する病気で注目したいのが脳卒中と心筋梗塞です。
その理由は、日本人の死因の2位が心筋梗塞を含む心疾患、4位が脳卒中だからです。
心疾患
心疾患の代表格は心筋梗塞や狭心症です。
心臓には冠動脈という栄養や酸素を受け取る重要な血管があります。
例えるなら、水中に潜った際に空気を吸うためのパイプのようなものですね。
パイプが細くなれば苦しいし、詰まれば息ができなくなって死んでしまいます!
高血圧によって冠動脈が硬くなり、心臓への栄養や酸素の流れが悪くなる、もしくは詰まる事で心筋は壊死してしまいます。
すると、胸の非常に強い痛みに襲われ、最悪の場合、突然死に至る恐ろしい病気です!
日本生活習慣予防協会によると、心筋梗塞の死亡率は発症してから30日以内で約20%にもなります。
元プロサッカー選手の松田直樹選手は、練習中に心筋梗塞で倒れ、帰らぬ人となりました。
その際、あまりの苦しさに
「やばい!やばい!」
と発していたそうです。
屈強なアスリートでさえ悶絶する痛みですから、本当に恐ろしです。
脳卒中
続いて脳卒中です。
脳卒中は、脳梗塞(脳血管が詰まる)や脳出血(脳血管が破れる)、くも膜下出血の総称です。
元読売ジャイアンツの木村拓也選手(当時はコーチ)は、練習中に突然倒れ、すぐに病院に搬送されましたが、容態が回復する事なく亡くなってしまいました。
くも膜下出血の恐ろしいところは、突然死だけでなく、バットで殴られたような激痛に襲われる事です。
想像するだけでゾッとします。
また、運よく一命を取り止めたとしても、その後に待っているのは、後遺症との長い長い付き合いと辛いリハビリ生活です。
僕はこれまで、脳卒中で片麻痺や言語障害などの後遺症を負った数々の利用者さんを見てきましたが、やはり辛いものがあります。
本人はもちろんですが、介護をする家族の負担も並大抵のものではありません。
また、今までできていた事が急にできなくなり、自由を制限されたような生活を送らなければならないのも、辛いものがあります。
もちろん、脳卒中や心筋梗塞を発症した人が皆不幸になっているという事ではありません!
ただ、健康で五体満足であるに越した事はないという事です。
自分の生活の送り方でそれが左右されるわけですから、後悔する前に高血圧の予防と対策に講じる必要があります!
参考文献
- 高血圧ガイドライン2019:日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会
- 公益社団法人 日本WHO協会ホームページ
まとめ
高血圧は、加齢や運動不足によって心肺機能が衰えたり、血管が硬くなる事によって引き起こされます。
その為、予防と対策で重要なのは
- 血管の柔軟性
- 心肺機能
の2つ!
そしてその2つの機能を向上させる為に必須となるのが
- 呼吸を阻害している筋肉のストレッチ
- 心肺機能を強化する有酸素運動
これらの運動(メンテナンス)です。
また、高血圧は日々の生活習慣によって引き起こされるので、塩分の摂り過ぎやストレス、喫煙などの見直しも必要になります。
これらで血行の促進を図り、血管の柔軟性を引き出す事が、高血圧の予防と対策で重要となります。
降圧薬だけでは根本的な問題は解決できません。
むしろ体の異常をそのままに無理に血圧を下げ、しかも副作用で負担は増す一方です。
健康は日々の積み重ねが大切ですので、これを機に高血圧の予防と対策を考えてみてはいかがでしょうか?
ただし、高血圧の方が運動をする場合は注意しなければいけないことがあります!
こちらの記事にまとめていますので、目を通してみて下さい。