高齢者となれば血管の弾力が低下して高血圧を伴いやすくなります。
高血圧の度合いによっては降圧剤を服用している高齢者の方も多いと思います。
しかし、高齢者の高血圧は、認知症のリスクを高め、更には高血圧の改善に用いる降圧剤もそのリスクを高めてしまうかもしれません!
そこで今回は、高血圧と認知症の関係について解説していきます!
目次
認知症と高齢者の関係
高齢者という言葉がありますが、何を基準にして高齢者と呼んでいるのでしょうか?まずは、そこをはっきりさせておきましょう(笑)
後期高齢者医療制度の基準では
- 65歳以上74歳未満を「前期高齢者」
- 75歳以上を「後期高齢者」
と位置付けています。
また、WHO(世界保健機関)では65歳以上を高齢者としています。
65歳を境に形式上では高齢者となるようです。
とは言え、最近の高齢者は良い意味で高齢者っぽくないですね!
姿勢が良いですし、スタスタ歩いてますし、スマホ使いこなしている人も見かけます(笑)
しかし、年を重ねる事に体力の低下や血圧が高くなるなど様々な体の変化がみられ始め、病気などのリスクも高くなっていきます。
そのリスクの中の一つが認知症です。
その原因は、加齢だけでなく、生活習慣病(高血圧、糖尿病)が関係していることが明らかになってきました。
特に高血圧は、加齢に伴い血管の弾力性が低下する事によって生じやすくなり、それに比例して認知症の発症率も高くなってしまうんです。
日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2014」によると、後期高齢者の降圧目標は150mmHg/90mmHg未満とあり、これが認知症や病気のリスクを減らす一つの目安になります。
厚生労働省(平成26年度)の調査では、65歳以上の高齢者のうち認知症に罹患している人は462万人もいるとの結果が出ており、高齢者全体の約15%の人が認知症に罹患しているとの結果も出ています。
また、認知症予備軍と言われている軽度の認知症の高齢者は400万人いるとされ、認知症罹患者と合わせると4人に1人が認知症に関連している状態のようです。
また、認知症罹患者の数は、高齢者の増加と比例して年々増加している傾向にあり、2025年には認知症の人(軽度認知症を除く)が700万人を超えるのではないかと予測されています。
認知症と高血圧の関係
では、認知症と高血圧がどのような関係性にあるのかみていきたいと思います。
認知症は、いくつかの種類に分けられます。
認知症の6割を占めるアルツハイマー型認知症、2割を占める脳血管性認知症の他、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。
このうち、脳血管性認知症の原因に高血圧が関与しています。
脳血管性認知症
脳血管性認知症は、その名の通り脳血管障害(脳卒中)によって引き起こされる認知症を指します。
脳卒中は、脳の血管が詰まる、破ける事によって周囲の脳組織が損傷を受け、半身麻痺や感覚障害、言語障害などの障害を伴います。
その中の一つに認知症があり、思考の中枢部である脳が損傷を受ける事で認知機能にも影響が及びます。
つまり、認知症は脳卒中の症状の一つというわけです。
脳血管性認知症の症状は、まだら認知症が特徴です。まだら認知症とは、障害されている能力と残存している能力により、できる事とできない事が現れます。
例えば、判断力や記憶は比較的保たれているけど、怒りっぽくて感情の起伏が激しいなど認知機能にムラが出てきます。
脳卒中の原因には、生活習慣病が大きく関係していると言われています。
特に、高血圧でそのリスクが高くなり、正常な人に比べて約3.4倍もリスクが高くなるとの研究結果も出ています。
高血圧の原因
高血圧は、本態性高血圧と二次性高血圧の二つの分類があります。
このうち、生活習慣が関係している高血圧は、本態性高血圧です。
二次性高血圧は、病気が元で起こる高血圧です。
食生活の乱れや肥満、運動不足、喫煙などの生活習慣によって血管の弾力性が失われるていくと、動脈硬化を引き起こします。
この動脈硬化によって、血管が脆くなり梗塞や出血の原因となります。
また、加齢によっても血管の弾力は低下していきますから、生活習慣と加齢の影響によって高齢者の高血圧の割合が多くなっていきます。
従って、高血圧は高齢者の脳卒中のリスクを高めるとともに、認知症の原因にもなる恐ろしいものなんです!
認知症と降圧剤の関係
では、高血圧の治療に用いられる降圧剤を服用すれば、認知症のリスクを減らせるのか?
答えは、YESでもあり、NOとも言えます。
なんだか歯切れの悪い回答になってしまいましたが、その理由を説明しますね。
降圧剤で認知症のリスクが減る理由
高血圧は、血管内のコレステロールの蓄積で狭くなったり、血管そのものの狭小化、硬くなる事などで血液の流れが悪くなり、血管壁にかかる圧力が高くなる状態のことです。
これにより、血栓(血の塊)ができやすくなったり、血管が破けやすくなって脳卒中を引き起こします。
ですので、降圧剤の服用で高血圧の改善を図れば、脳血管にかかる負担が減りますから、脳卒中のリスクも減ります。
「国立研究法開発法人 国立研究センター 社会と研究センター予防研究グループ」の研究によると、脳卒中発症の原因の35%が高血圧であるとの結果が出ています。
従って、高血圧の改善の為に継続して降圧剤を服用する必要があり、それが認知症の予防にも繋がるわけです。
降圧剤で認知症のリスクが高くなる理由
その反面、降圧剤の服用で低血圧状態が続いた場合、認知症のリスクが高くなる可能性もあります。
それは、降圧剤が効きすぎる事で脳への血流量が減少して脳機能が低下する恐れがあるからです。これにより、認知症のリスクが高くなってしまうかもしれないんです。
低血圧の症状には、めまいや眠気、立ち眩みなどがあります。
降圧剤を服用し始めてこれらの症状がみられた場合は、薬が体に合っていない可能性もある為、一度担当の医師に相談した方が良いです。
ただ、降圧剤が認知症のリスクを高めるという明確な根拠はまだありません。
ですが、体に負担をかける事は確かですから、少しでも異変を感じたら、まずは担当の医師に相談することが大切です。
まとめ
高齢になるに従い、血管の弾力性が低下したり糖の代謝機能が落ちて高血圧を伴いやすくなります。
高血圧は脳卒中の引き金となり、その原因には加齢や生活習慣が関係しています。
そして、脳卒中の症状の中に認知症があり、これを脳血管性認知症と呼びます。
特徴はまだら認知症で、障害されている能力と残存している能力が混在している状態です。
これらを予防する為に降圧剤で血圧のコントロールを図ります。
しかし、降圧剤が効きすぎて低血圧状態が続くと、脳への血液量が減少して脳機能が低下し、認知症を発症する恐れもあります。
高齢者になると、血管の衰えや運動不足などが原因で高血圧になりやすくなります。
これが、認知症を引き起す要因となってしまう為、運動習慣や食事のバランスを意識して、健康な体を作りましょう!
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